20世紀のはじめ、まだ胃カメラのない時代にアメリカで起こった話ですが、ハマグリのシチューを過っ
て飲んで食道がつぶれ、胃に穴をあけてチューブを出し、ここから一度口でかんだしょくもつを食事として注入するトムという患者がいました。今でも「トムの胃」として有名ですが、医師は繰り返しトムの胃を観察しているうちに、トムの気分により胃壁の色調が変わることに気づきました。気分のよいときには胃は美しいピンク色をしていますが、何か気に入らないことがあり怒っているときには胃壁はどす黒い色に変色しているのです。そのようなことから、心理的な変化に応じて、胃の血流が変化することや胃酸の分泌に影響が与えられることが分かってきました。
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その後、このような心理的ストレスが胃潰瘍を起こ す実証的研究が行われています。
1例を挙げると、ネズミを水の中につけ泳がせるとス トレス潰瘍は起きるが、これは物理的なものであり、心理的なものは測定できません。そこでネズミを対照と電気ショック群と、電気ショックの前に一定の音を出して合図をする群の3群に分けると、何の合図もなしに電気ショックを与えた群に一番強い潰瘍が起き、合図して用意をさせた群の方に病変が少なかったのです。また合図を与えた群で、回避や逃避が出来る群を作るとさらに病変が少ないという実験結果がでました。
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又、別の実験ではラットの結果とは反対で、対の猿を用いて、一定のレバーを押せばショックより回避できる管理職ザルと、回避できなかった猿
を比較すると、ショックを受けずにすんだ管理職ザ ルは重症な胃潰瘍にかかって死んでしまったのに 対し、同一のショックを受け、回避反応を行うこと
ができなかった相棒の猿は病気にもならず生き続 けたそうです。
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このような実験結果により、同一のストレスでも病
変を作ったり作らなかったりすることから、個体差を
考える必要があることが人でも十分に考えられるの
です。つまり人によってストレスと感じる人、感じない
人、同じストレスでもそれに合理的に回避できる能力
を持った人、持たない人があることが推測できます。
つまり、ストレスの量と質、これを受ける側の受容
の間には極めて広がりがあり、従って胃潰瘍の発生
する人、しない人が出てくるわけなのです。抗不安剤
などが胃潰瘍の予防・治療剤として有効な理由もここ
にあるわけなのです。
ストレスの多い社会で、健康を保持するためには、
ストレスと上手に付き合う方法を考え、時には、何もかも忘れて没頭できることをみつけて “ストレスに強い人”になる努力をしてみてはどうでしょうか?本を読むとか・・ |