3.ハチミツ,ローヤルゼリーおよび花粉荷の化学成分組成の比較考察
越後多嘉志,竹中哲夫(日本)
(第30回国際養蜂会議)


今日、人間が利用しているミツバチ生産物には、ハチミツ、ローヤルゼリー(以下RJと略称)、花粉荷、プロポリス、蜜ろう、蜂毒がある。これらのうち食品としては、ハチミツ、RJ、花粉荷が利用されてきたが、花粉荷は日本において、これから研究されなければならない食品素材である。ところで、ハチミツとRJの栄養特性は、長い間注目されてきたが、化学的解明は不十分である。これに対して、花粉荷の食品化学的研究は、今始まったばかりであるから、その栄養特性は全く不明だが、花粉荷の化学的研究は人間ばかりでなく、ミツバチに対する栄養特性を研究するに必要な資料を提供すると考えられる。したがって、本研究では3種類の材料の化学成分組成を調べ、それらの化学成分上の特徴を明らかにしたい。

さらに、この研究は、花蜜と花粉荷中の成分から、RJ中の成分への生化学的反応系を調査するための基礎的資料を与えるので重要と思われる。

材料および方法
1.材料
本試験に用いたハチミツ、RJは、国内(日本)の養蜂家から得られ、また、花粉荷は玉川大学(東京)の養蜂場より数種花粉の混合物として入手した。

2.方法


1)一般化学成分組織


水分、タンパク質、エーテル抽出物(脂質)、繊維および無機質の定量分析は、常法により行い、炭水化物量は、全体からこの5成分の差し引きによって求めた。

2)糖組成

全糖量と個々の糖量は、化学的方法とペーパークロマトグラフィーによる切り抜き法によって求めた。

3)窒素成分(タンパク質および遊離アミノ酸)組成

全窒素ならびに水溶性窒素量の測定には、ミクロケルダール法を用いた。水溶性窒素のうちタンパク質態窒素は、10%トリクロロ酢酸により沈殿する窒素量を求めて算出した。さらに、遊離アミノ酸組成は自動アミノ酸分析装置を用いて測定し、また、総遊離アミノ酸量はこのアミノ酸分析値より算出した。

4)エーテル抽出物組成

各材料から、ソックスレー抽出装置により得られたエーテル抽出物を、TownsendとLucasの方法により分画した。すなわち、カルポン酸類、弱酸性化合物(フェノール)類、ステロールと中性脂肪類、ワックスおよびその他の区分に分画した。なお、各分画量は、それぞれの重量を測定して求めた。

5)エーテル可溶性カルボン酸の組成

エーテル可溶性カルボン酸試料は、BrownとFreureの方法にしたがって調整した。すなわち、試料をトリメチルシリル(TMS)化剤によりカルボン酸誘導体とし、ガスクロマトグラフィーにより検出した。なお、カルボン酸の同定は、著者らが以前にガスクロマトグラフィーと質量分析計により同定した、標準カルボン酸の保持時間と対比して行った。

6)無機質組成

各材料の無機質組成は、原子吸光法によって陽イオン(K+、Na+、Ca2+、Mg2+、Fe3+)濃度を測定して求めた。


結果

ハチミツ、RJ、花粉荷の一般化学成分組を調査した。各材料とも、植物の種類や採取条件によって分析値にかなりの幅があったので、その結果は平均値で示した。
ハチミツの化学成分組成は、RJや花粉荷とは明らかに異なっていた。すなわち、ハチミツは炭水化物成分に偏っているのに対し、RJと花粉荷は炭水化物、タンパク質、エーテル抽出物の各成分がバランスよく配分されていた。なお、RJと花粉荷との相違は、花粉荷中に繊維を含んでいることに認められた。

次に、3種類の糖組成を調べた。RJ中のシュークロースと、その他のオリゴ糖の合計量は、検出された合計量の13%であるが、シュークロースのみでは3%程度と推定される。一方花粉荷のシュークロース量は21%であり、ハチミツやRJ中のシュークロースよりも多い。また、含有しているオリゴ糖の種類を比べてみると、ハチミツはRJと似ているが、花粉荷とは異なっているように思われた。それは、ハチミツやRJの中に見出されないペントース類や、ガラクトースを構成糖とするオリゴ糖が、花粉荷中に存在することが報告されていることから判断される。

さらに、カロース、スポロポレニン、セルロース、ペクチンのような繊維性物質が花粉荷中に検出されたという報告もある。以上の結果を総合すると、糖組成ではハチミツとRJはよく似ているが、花粉荷とは異なっていることが明らかになった。とくに、花粉荷の多糖類の存在は、成分上のひとつの特徴であろう。
窒素成分組成と遊離アミノ酸組成を調べた。ハチミツやRJの水溶性窒素の全窒素に対する含有割合は、花粉荷に比べて大きかった。とくに、ハチミツや花粉荷とは異なり、RJの水溶性タンパク質態窒素量は多いが、ペプチドやアミノ酸態窒素量は少ない。さらに、RJの一部のタンパク質は、マンノースとグルコースから構成された炭水化物と結合している糖タンパク質であることも確認されている。ハチミツの遊離アミノ酸組成は、花粉荷のアミノ酸組成と類似しているが、RJとは相違していた。したがって、窒素成分分布においてはRJのみは他と明らかに異なり、特徴的であった。

●エーテル抽出物組織を調査した結果、はxひみつは、ステロールやグリセリドが他の成分に比べて多く、花粉荷は弱酸性化合物(フェノール)類が多いのに対し、RJはカルボン酸の種類は、他の2つの材料とは相当に異なっていた。
著者らはすでに、RJのエーテル抽出物中から、ガスクロマトグラフィーと質量分析計によって、11種類のエーテル可溶性カルボン酸を同定した。同定した酸のうち、10-ヒドロキシデセン酸(エーテル可溶性酸中47%含有)と、10-ヒドロキシデカン酸(エーテル可溶性酸中32%含有)の両酸が主成分であり、しかもこの両酸は、ハチミツおよび花粉に通常見出されない。なお、グリセリドを構成する脂肪酸を調べて、
パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸などを検出したが、ここに検出された脂肪酸の種類に関しては、3種類の材料間に差異が認められなかった。以上のようにRJのエーテル抽出物組成においても、ハチミツや花粉荷と明らかに異なり、これがRJの成分上の特徴と思われた。

RJは、無機質組成において花粉荷とやや類似しているが、ハチミツとは異なる。無機質量にについては、RJと花粉荷は、ハチミツよりもはるかに豊富であった。また、5種類の陽イオンのうちで、カリウム濃度はすべての材料に共通して最も大きかった。


考察

本研究では、ミツバチではなくて人間に対する栄養特性に着目し、論議したい。最初に、ハチミツの成分上の特徴を要約すると次のようになる。
ハチミツはフラクトース38%、グルコース31%を含むが、この両糖はいずれも、シュークロース、マルトース、ラクトースのようなオリゴ糖よりも容易に消化されやすい単糖である。また、ハチミツはいろいろな有機酸を含み、pH3.7を示す。
したがって、ハチミツは糖の甘味と有機酸の酸味がよく調和して、良好な甘味料として使われる。さらに、ハチミツは強い保水性、食品として易消化性、さらに心よい味覚と香気を呈する。これは、上記のような糖や酸成分から由来する要因によって生じたものである。

次に、RJの特徴は、ハチミツや花粉荷には検出されず、しかも人間やミツバチに生理的効用があるとされている化学成分を含んでいることにある。
これらの成分の内で、比較的多量に含み、しかもこれまで、ある種の生理的作用を有すると指摘されている物質がある。すなわち、新鮮RJ1g当たり10-ヒドロキシデセン19mg、セバチン酸0.9mg、パントテン酸320μg、糖タンパク質21mgNであり、しかもそれぞれ、抗腫瘍活性、みず虫に対する活性、老化防止ビタミン活性、類パロチン活性があると報告されている。ここで、RJ全体を通して、これらの成分の効用を考えるとき、人に対するRJの栄養生理的効用は、各成分の単独作用というよりむしろ、各種成分の複合作用によるものと考えるのが妥当と思われる。

最後に、花粉荷の食品としての利用と栄養特性についてであるが、花粉荷は、前途のごとく現在、全く調査されていない。しかしながら、花粉荷のタンパク質、ビタミン、繊維性物質、とくに食品繊維物質に注目して、今後、食品としての利用と栄養特性を考えてみたい。


4.ラットの生体重,組織重,ホルモンレベル,ヘマトクリット値に対するローヤルゼリーの効果

 
L-BANBY,M.A.;HELAL,A.F.;
ISMAIL,A.M.(エジプト) (第30回国際養E蜂会議)
 
雄のアルビノラットに、ローヤルゼリーを腹腔内注射あるいは胃管によって処理した。対照区としては、生理食塩水を用いた。
ローヤルゼリー処理の2つの方法は、次の諸点において同様の効果がみられた。前立腺および精巣重量の減少、およびトリヨ−ドチロニンの低下、黄体形成ホルモン、テストステロン、プロゲステロンレベルの増加、グルタミン酸オキザロ酢酸トランスアミナーゼとグルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼ酵素活性の上昇がみられた。
胃内へのローヤルゼリーの適用は、体重増加、チロキシン、コーチゾレベル、アルブミン/グロブリン比を増加させたが、腹腔内注射によると、これらはいずれも減少した。胃内処理は、肝臓および腎臓重量と総タンパク%を減少させ、腹腔内注射は、これらを増加させた。

5.日本におけるローヤルゼリーの利用とその評価

井上丹治(日本)
(第30回国際養蜂会議)

 

1959年、ローヤルゼリー製品が渡来して以来、わが国においてもローヤルゼリーの生産が活発になってきた。当初、ローヤルゼリーは、製薬会社から発売されていた滋養強壮剤としてのアンプル製品に、ビタミン類とともに強壮剤として利用されていたが、1970年頃、公害による難病が多発した折、健康食品として利用され、いわゆる、健康食品ブームが起こった。これが今日まで続き、現在では、薬品としてよりも健康食品として利用される方が多くなった。1965年に年間約3tと推定されたものが、現在では年間180t消費されるまでに成長し、世界一のローヤルゼリー消費国に進んだ。

食品としてのローヤルゼリーの利用は、次のようである。

 ・生(なま)のまま食する方法
 ・生ローヤルゼリーとハチミツとミックスして利用する方法
 ・生ローヤルゼリーを凍結乾燥させ、これを乳糖とともにカプセルまたは錠剤とする方法

以上、3種が主なものである。

また、化粧品類にも応用されている。
ローヤルゼリー製品が市販されて25年余の歳月が経過した今日、なお、消費が年々増加しているのは、ローヤルゼリーを用いて効果があがったのと、ローヤルゼリーへの信頼が高いからである。
筆者は、ローヤルゼリーの愛用者の1人であるが、朝起きたときの空腹時にサジ2杯、夜就寝時にサジ2杯飲んでいるが、胃腸がよく、顔に赤みがさし、毎朝一定時刻に便通がある。このような状態がつづくことは、体調のすぐれている証拠である。

なお、その他の病気としては、更年期障害、生理不順、自律神経失調症、腰痛、冷え性、肩こり、小児喘息、肝機能不全、便秘、不眠症、ガン患者の延命、疲労回復等、数々あるが、ローヤルゼリーにこれまでの薬品に見られない魅力があることが、今日の消費増大に直結しているものと考えられる。

 
ローヤルゼリーの用法および用量

ローヤルゼリーの使用量は、1日500mg前後のごく微量の継続的利用が人間の体調を調整して健康にと導き、ひいては長寿につながるものと考えられる。しかしながら、諸々の難病に直面した場合、利用者の用量は自ら増大するのが一般的と考えられる。民間療法としての飲用目的別の用量は不明で、これからの体験と研究が必要と思われる。
民間療法としてのローヤルゼリーの利用は、今後もますます増大するものと考えられ、良質のローヤルゼリーの生産と、その処理方法については、細心の注意と努力が必要である。
 

6.ローヤルゼリーの薬効について

久嶋勝司(日本)
(第30回 国際養蜂会議)

 
民間の人々は、ローヤルゼリーには驚異的薬効があると信じている。しかし、ローヤルゼリーがどんな病気に、どういう理由で効くのかということを医学的に研究した報告は、ほとんど見あたらない。筆者は、ローヤルゼリーの効果について、臨床的・動物実験的に検討したので、その成果を発表する。
はじめに、自律神経失調症に対するローヤルゼリーの効果について述べるが、“自律神経失調症”は、新しい概念なので、まず、この病気の説明を加える。症状は確かに存在するのに、その症状と結びつくような身体の変化がどうしても見付からないことがある。こんな、一人歩きしている症状を不定愁訴と名付けており、そして、自律神経機能が不安定なために起こる不定愁訴が自律神経症である。婦人には更年期障害という病気があるが、この病気は、更年期婦人に起こる不定愁訴であり、自律神経失調症である。自律神経失調症を具体的に理解するためには、症状の1つひとつを説明するのが好都合であろう。(表1)

●熱感:“ほてる”ということであり、その部分の温度が昇ってくる感じである。

●冷え性:足とか腰とかの一定の身体部分だけが特に冷えて、不快な場合をいう。中国医学でいう冷え性、このような不快な冷えばかりではなく、貧血とか血液循環障害を含めている。

●のぼせ:顔などに血がのぼる感じをいう。

●心悸亢進:動悸するような感じをいい、心拍数が多くなるわけではない。

●不定愁訴の頭痛:脳腫瘍があるとか、高熱を出す病気があるとか、または、高血圧症があるということはなく、ただ頭痛がだけであり、日本では“頭痛持ち”というふうに表現される頭痛である。

●めまい:天井がグルグル廻る感じや“立ちくらみ”の形のものがある。

●しびれ感:麻痺のほかに、知覚過敏の状態も含まれる。

●刺激膀胱:尿が濁っていないのに尿が近い(頻尿)とか、尿をするとき痛い(排尿痛)などがある場合をいい、以前は、膀胱神経症と呼ばれていた。

●不定愁訴の腰痛:朝起きがけが最もひどく、起きるのがつらいが、無理して起き、歩き廻っているうちに痛みが薄らいで、やがて痛みがなくなってしまう、といったような腰痛である。

●関節痛や脊柱痛:骨や関節には悪いところがないのに、痛みだけがあり、しかも痛い部位が移動するのが特徴である。

●不定愁訴の発汗:発作的にパッと現われ、顔や毛髪の生えている部分に強く出るのが特徴である。

●不定愁訴の食欲不振:胃腸病のときの食欲不振とは違い、患者は「食べられるときと食べられないときがある」と訴えることが多い。

●疲労感:“けだるさ”“脱力感”から“精力減退感”までが含まれる。

●不定愁訴の腹痛:痛む部分が移ってゆくのが特徴で、今日は右側、明日は左側、上腹が痛いといったり、下腹部が痛いといったりする。

自律神経失調症の不定愁訴のうちには、例えば、冷え性、腰痛症、不眠症、刺激膀胱などのごとく、独立した疾患として扱われているものもある。
a)自律神経失調症の諸症状とRJ(筋注)の効果

このような自律神経失調症の20例に、ローヤルゼリー40mgを含む注射液を7〜20日間、筋注してみた。その成績は著効4例、有効11例、無効5例で、有効率は75%であった。ローヤルゼリーを含まぬ注射液を別に作り、これを自律神経失調症に筋注したのでは有効率は30%に過ぎない。症状別の有効率は表1に示した。大部分は60〜100%の有効率であったが、冷え性・肩こりでは有効性がやや低く、関節痛・頭痛・腰痛などでは、さらに有効率が下がり、脊柱痛では20%以下であった。

b)妊娠中毒症に対するRJ(筋注)の効果


妊娠末期に、タンパク尿、浮腫および高血圧などの症状を及ぼす妊娠中毒症に対し、40mgのローヤルゼリーを含んだ注射液を1日に1本ずつ筋注し、5〜12本を注射した成績を表2に示した。

症状のうち、タンパク尿は全例が減少または消失しており、浮腫は消失1例、不変2例であった。高血圧を認めたのは6例であったが、全例とも改善され、血圧が下降した。以上から、妊娠中毒症の腎臓症状に対し、ローヤルゼリーが有効であることがわかる。しかし、子癇のような急性に経過するものには適してないと考えられる。

(表1)

表1 自律神経失調症の諸症状と、これに対するローヤルゼリー筋注の効果

症状 有効率(%) 症状 有効率(%)
熱感 63.6 刺激膀胱 100.0
冷え性 57.1 腰痛 35.0
のぼせ 63.6 肩こり 57.9
心悸亢進 87.5 関節痛 50.0
頭痛 45.5 脊柱痛 16.2
頭重感 発汗 100.0
めまい 71.4 悪心 100.0
不眠 63.6 食欲不振 64.7
耳鳴り 66.7 便秘 75.0
恐怖感 66.7 疲労感 72.7
しびれ感 88.9 腹痛 100.0

表2 妊娠中毒症に対するローヤルゼリー筋注の効果

投与前後の各症状の変化
 症例 
 番号
 
投与量 タンパク尿(‰) 浮腫 高血圧(mmHg) 効果
前後 前後 前後
タンパク尿
1.

中毒症
1A×5 0.1 ±    
2. 1A×7 3.0 2.0 160〜96 140〜90 ±
3. 1A×12 5.0 0 205〜130 185〜120
4. 1A×7 3.0 1.0 160〜100 140〜90
5. 1A×7 3.0 2.0 ++ 170〜110 160〜100 ±
6. 1A×5 1.0 0 150〜90 140〜90 ±
7. 1A×5 4.0 1.5 ++ 150〜98 140〜98

c)新生児(未熟児)に対するRJ(筋注)の体重増加について
新生児とか未熟児にローヤルゼリーを与えると、発育がよくなるという人がいる。そこで、未熟児で体重が増加し難いもの、また、成熟児でありながら体重が増加してないものに対し、未熟児ならば1回4mg、成熟児ならば1回6mg宛を筋注してみた。

図1に示したように、未熟児はローヤルゼリーを与えることによって、いずれも体重が増加しはじめるのが認められる。しかし、生まれたときの体重は成熟児に相当したのに、その後、体重が増加しない新生児に対してローヤルゼリーを投与した場合は、予想に反して体重が増えることはなかった。このことは、ローヤルゼリーは、未熟児の発育促進に効果があったことを示していると思われる。



d)RJの若返り作用について


“若返り”について、動物実験した成績について述べる。ローヤルゼリーには若返り作用があることは有名であるが、その根拠となっているのは、ローマ法皇ピオ12世に対して主治医ガレアジイ・リシ博士が行ったローヤルゼリー療法である。このとき、ピオ12世がローヤルゼリーによって、死の淵から蘇生してきたことは事実であっても、決してローヤルゼリーで若返ったために蘇生したのではない。このときは、ピオ12世の体の中の細胞が弱っていたのが、ローヤルゼリーで賦活され、正常の機能に回復したためと考えられる。その証拠に、若い人で何回も手術を繰り返し、身体が衰弱して、瀕死の状態となったときに、ローヤルゼリーを注射して、危機を脱した人のことが報告されている。従って、ピオ12世の場合は、若返りまたは不老長寿ではなく、起死回生だったわけである。

●・・・著者らは、ラットを使って、ローヤルゼリーに若返り作用があるか否かを検討した。老化の程度を測る尺度には、動物の脳組織をアクリジン・オレンジで染色したときに発する螢光の波長を用いることにした。この螢光の波長は、老化が進むほど長くなる。すなわち、若い動物の組織が発する螢光は波長が短く歳をとった動物の組織が出す螢光ほど波長が長いことがわかった。また、老若いろいろな人間の屍体から間脳を切り出し、同じような実験をすると、ラットの場合と似た成績であった。同じ母親から生まれた雌ラットを育て、700日齢となったものを実験に用いた。ラットの700日齢は、人間の更年期に相当する。予備実験で、700日齢のラットについて間脳の螢光の波長を測ると平均aとなるので、これを図2の左図に描き入れる。本実験では、700日齢の雌ラットを2群に分け、一方には、ローヤルゼリー1日10mg宛を腹腔内に注入し続け、他方には、食塩水だけを注射し、3週間で両方を殺し、間脳の携行の波長を測定してみた。
食塩水だけを注射して3週間(すなわちX日)経過したラットでは、波長がa+b+cであったのに、ローヤルゼリー群では、波長がa+bに留まった。食塩水のみ注射した対照群の年齢曲線上に、(a+b)の長さの波長に相当する点を求めると、y点すなわち、y日齢に相当することになる。このことは、ローヤルゼリーを注射したラットでは、螢光波長でCだけ、年齢ではx−y日齢だけ若返っているということを示す。この実験により、ローヤルゼリーの若返り作用が確実に捉えられたと思われる。

●・・・又、20gぐらいの雄マウスの全身にX線500レントゲンを照射すると、マウスの臓器に、老化したときと同じ変化が起こり、障害の強いものから、次々と死んでいく。
マウスを2つの群に分け、一方には、全身照射だけをしたグループ、他方には、照射する前にローヤルゼリー4mgを1回、腹腔内に注射をしておき、その上で全身照射をしたグループをつくった。両グループの生存率を示したのが、図2の右側である。
両グループとも、照射してから10日目以後に死亡するものが出ているが、全身照射だけの対照群では死亡率が高く、しかも、照射後20日目まで、毎日のように死亡するものが見られる。20日以上生存したものは、その後、死亡することはないが、結局、死亡率60%、生存率40%という結果であった。

これに対し、ローヤルゼリーで前処置したグループでは、対照群に比べて死亡率も低く、死亡するのは照射後12日目までで、13日以上生存したものは、その後死亡するものがなかった。結局ローヤルゼリー注射群では、死亡率20%、生存率80%であった。

すなわち、ローヤルゼリーは、X線障害を軽減する作用があり、この事実は、老化阻止作用を説明する材料となるかもしれない。

7.異物代謝に関与するミクロソーム酸素系に及ぼす蜂乳の効果


STOJKO,A.;SZAFLARSKAーSTOJKO,E;
OSTACH,H.(ポーランド)
(第30回国際養蜂会議)

 
触媒的に活性なタンパク質のレベルは、酸素活性に直接関係がある。この現象は、酵素の活性化および不活性化と呼ばれる。酵素の誘導による活性化要因の1つとして、蜂乳を挙げることができる。これは環境からの、特に有毒素が体内に入ってきた異物として認められた時、意義のある過程である。本件級はラットにおいて、特定の含鉛生体外物質の代謝に対する蜂乳の影響を見たものである。この観点から見た時に、この有毒金属の摂取量がある程度あったとしても、蜂乳の存在下では、いわゆる代謝阻害(生化学的欠損)が起きずにすむ。一方、蜂乳中のアミノ酸が活性タンパク質の合成に関与し、生体外の物質の代謝に関する酵素を活性化しているものと考えてよい。この現象から、鉛汚染の危険にさらされているものの生態学的な予防に、蜂乳を利用することができるのではないかと考えられる。さらに、鉛以外の環境起源の有毒物質に対する機能もあると考えてよかろう。
 
B-B